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シャワーを浴び終えてバスローブを纏い、髪を拭きながらキッチンへ向かうと電気ケトルに水を入れてスイッチを入れる。沸騰するまでの間にゆったりとした所作でコーヒー豆を挽き、手慣れた動作でコーヒーをドリップすると、温かいそれを持ってベッドルームへと向かう。
今しがた殺した男を眺めながら、冷めていく部屋の中で椅子に座ってゆっくりと温かいコーヒーを飲むのが永穂の性癖だった。
首に赤い絞痕と目や鼻からの軽い出血が残っている以外は、その死体はひどく綺麗で、眠っているかのようなその表情は永穂の中の何かを刺激する。
血が通っていないのが分かる、青ざめたように白々とした皮膚、死後硬直が始まって独特の硬さを持った筋肉、派手に出血させていないからこそ分かる、鼻をくすぐる様な百合の花にも似た甘い甘い死臭。
この男が生きていた時よりもずっと愛おしかった
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