受けが出て来るだけの話

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受けが出て来るだけの話

まだ桜の蕾も寒がりそうなほどに冷たい風の吹く立春の頃。 間接照明だけの温かい色ではあるが少し薄暗い照明の、セミダブル程の大きさのベッドとデザイナーズチェアが一脚、サイドテーブルが一つだけ置かれた、まるでモデルルームかホテルのように生活感の無い部屋。 この部屋の主である永穂悠臣(ながほはるおみ)は一糸纏わない姿でベッドの上に組み敷かれ、はしたない泣き声を上げながら享楽に耽っていた。 ふんわりした天然のウェーブがかかった優しい飴色の髪が汗で額に張り付いて、普段は色の白くなめらかな背中がキスマークによって雪上に落ちた南天の実のように赤く色付けられ、そのうつくしい様子が今永穂を犯している人間を高揚させる。 普段は眼鏡の奥に髪と同じ優しい琥珀色の瞳を湛えているが、今は眼鏡はベッド脇のサイドテーブルに置かれ、瞳は快楽を享受しようと硬く瞑られて、長くふさふさとした睫が上気した頬に影を落とす。 幾度となく粘膜を突き上げられ、その度に永穂の薄い尻から肉のぶつかり合う音が響き、それに合わせる様にまた嬌声を上げる。 「あぁっ! 気持ち、いい……」 永穂は既に幾度か絶頂を迎えていて、今起きるのはもう、射精を伴わない快楽だけだった。     
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