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微笑む樹君のおばあちゃんの後ろから、不服そうな顔をした樹君が階段を下りてくるのが見えた……。
樹君のおばあちゃんも気付いたのか、おはようと言いながら振り返る。
「遅いじゃない。もうひらりちゃん来ちゃったわよ」
「……俺言ったよね? 嫌だって」
「そんな冷たいこと言わないの!」
どうしたらいいのか分からない私をよそに、二人は言い合いを始める。
「だから、知らないって。別に子どもじゃないんだし好きにさせればいいじゃん」
「ちょっと、樹!」
「いってきます」
樹君は私の横をすり抜けていく。残された私に――樹君のおばあちゃんが困ったような笑みを向ける。
「ごめんね、あの子ってば……」
「い、いえ……私なら大丈夫ですから。行ってみたいところもありますし、気にしないでください」
心配そうに私を見つめる樹君のおばあちゃんは、私の言葉に少しホッとした顔をした。
「本当に? じゃあ、ご飯は用意しておくから食べにきてね」
「はい!」
「うちはいつも樹と二人だから、女の子がいると思うと張り切っちゃうわ」
「二人……?」
私の言葉に、樹君のおばあちゃんは曖昧な表情で微笑んだ。
聞いてはいけなかったのだろうか……。思わず言葉に詰まると、樹君のおばあちゃんはごめんなさいね、と言った。
「あ、あの……」
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