いつかの向日葵をもう一度

12/20
前へ
/20ページ
次へ
「さて、どうしようかな」  行ってみたい場所があるというのは、嘘ではない。  嘘ではないんだけれど……。 「どこにあるか……わからないんだよね」  小さい頃の記憶を辿ってみても、どうやってそこに行ったのか全く思い出せない。  ただ覚えているのはたくさんの向日葵と……そして、連れて行ってくれたあの子の手があたたかかったことだけで……。 「とにかく探すしかないよね」  幸いと言っていいのか、まだまだ滞在日数はたっぷりある。ひたすらに探せばその内見つかるだろう。  そう思って私は、思い出の場所探しを始めた。  始めたのだけれども……一週間が経っても私はその場所を見つけられないでいた。  子どもの足で行ける範囲だから、そう遠くはないだろう――そう思って歩いて行ける場所を探し歩いていたのだけれども、いくら探しても見つからない。手がかりすら見つからない。 「なんでないの……」  思い出の場所、なんて言っても普段生活している中でずっと気になっていた、という訳でもない。ただ、なんとなくもう一度――あの場所に行ってみたいと、そう思ってしまった。それだけなんだけど……。 「でも……見つからないとなると、余計に見つけたくなるのよね」     
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加