いつかの向日葵をもう一度

4/20
前へ
/20ページ
次へ
 送られてきた地図を見ることもなく、ただひたすらに続く一本道を私は歩き続けていた。  だけど、歩いても歩いても目的地である祖母の家は見えてこない。――そもそも、どうして私が歩いて行かなければいけないのか。 「迎えに来てくれても、いいと思うんだけど……」  お父さん……そう続けたかったものの、なんとなくその言葉を口にするのを躊躇ってしまう。  最後にそう呼んだのは、今よりもずっと小さな頃で……。 「はぁ……」 「――おい」 「……あとどれぐらいかなぁ」 「おいって言ってんだろ」  イライラとした口調でそう言うと、誰かが私の肩を掴んだ。 「――私!?」 「他に誰がいるんだよ」  慌てて振り返った私の視線の先には――自転車に乗った同じ年頃の男の子がいた。 「あんただろ? 小林さんちの娘さんって」  小林さん――そう呼ばれていたのは母が……かつて父であった人と別れる前のことだった。けれど、私をそう呼ぶこの子は……? 「あんたの父親から頼まれて迎えに来た」 「……父から?」 「そう。ったく、ちんたらしてんなよな」 「はっ!?」  伝えようとした感謝の言葉は、めんどくさそうに吐き捨てられた彼の言葉によって遮られた。     
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加