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送られてきた地図を見ることもなく、ただひたすらに続く一本道を私は歩き続けていた。
だけど、歩いても歩いても目的地である祖母の家は見えてこない。――そもそも、どうして私が歩いて行かなければいけないのか。
「迎えに来てくれても、いいと思うんだけど……」
お父さん……そう続けたかったものの、なんとなくその言葉を口にするのを躊躇ってしまう。
最後にそう呼んだのは、今よりもずっと小さな頃で……。
「はぁ……」
「――おい」
「……あとどれぐらいかなぁ」
「おいって言ってんだろ」
イライラとした口調でそう言うと、誰かが私の肩を掴んだ。
「――私!?」
「他に誰がいるんだよ」
慌てて振り返った私の視線の先には――自転車に乗った同じ年頃の男の子がいた。
「あんただろ? 小林さんちの娘さんって」
小林さん――そう呼ばれていたのは母が……かつて父であった人と別れる前のことだった。けれど、私をそう呼ぶこの子は……?
「あんたの父親から頼まれて迎えに来た」
「……父から?」
「そう。ったく、ちんたらしてんなよな」
「はっ!?」
伝えようとした感謝の言葉は、めんどくさそうに吐き捨てられた彼の言葉によって遮られた。
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