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「あ、もういない」
おばあちゃんのお葬式の翌日、用意されていた部屋からリビングに降りていくと、そこにはすでに父の姿はなかった。
八年ぶりに会ったというのに、元気だったか? の一言もなかった父にがっかりしながら、そういえばああいう人だったっけ、と記憶の中の父の姿を思い出していた。
そして――。
「「高瀬さんちに行くように」……?」
誰もいないリビングの机の上に置かれたメモには、そう書き残されていた。
「――おはよう、ございます……」
「ひらりちゃんおはよう。よく眠れたかしら?」
「はい……」
玄関から声をかけると、樹君のおばあちゃんが顔を出した。
「朝ごはんは食べた?」
「はい」
「そう。……ちょっと待ってね。――樹、まだ寝てるのかい? ひらりちゃん来たよ!」
樹君のおばあちゃんは、どうやら二階にいるらしい樹君に声をかけた。
「あの……?」
不思議そうな表情を浮かべていたのだろう、私の疑問に答えるように樹君のおばあちゃんは言った。
「一ヶ月も一人じゃ退屈でしょ? 樹にひらりちゃんの世話をするように言ってあるからね」
「……え?」
「仲良くしてやってね」
「ええええ!?」
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