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数日後、僕はまたあの女の子に会った。
勇気を出して声をかけると、彼女はすぐに駆けて行こうとした。その彼女の腕を僕はつかんだ。彼女は一瞬ビクリとして僕を見たが、僕が微笑むと安心したのか、立ち止まってくれた。
「いきなりつかまえてごめん。この辺に住んでいるの?」
彼女はコクリとうなずいた。肩までの髪の毛がふわりと揺れた。
「僕はそこの高校に通ってる五十嵐圭太。君の名前は?」
初対面の女子高生に、こうして名前を言っている自分に少し驚いた。
「橋本莉緒」
彼女はか細い声で答えてくれた。僕と同じ高二らしい。
このほんの些細な自己紹介の間、莉緒はずっと怯えるような目で僕を見ていた。まるでそこにいる白猫と同じ目だ。
「名前、なんていうの?」
「橋本莉緒……」
「じゃなくて、あの白猫の名前だよ」
僕の問いかけに、彼女はクスリと笑って答えた。彼女の頬がほんのりと赤く染まった。
「汚れているけど、一応白いから、シロ」
「そのまんまだね。というか犬みたいな名前だ」
僕もクスッと笑った。
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