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僕はミイの前足に点滴の針を刺し、テープで固定した。舐めてチューブを引き抜かないよう首にエリザベスカラーを付け、そのまま入院用のケージに移動させた。ミイはおとなしかったが、目はずっと怯えていた。
診察台を綺麗に消毒し、自分の体に付いたミイの毛を粘着クリーナーで取った。僕はここではほとんど白衣は着ない。いつも白のポロシャツにジーンズだ。
動物病院特有の獣の臭い、薬の臭い、大きな空気清浄機と時々漂う猫の毛。そんな中で僕は一日を過ごす。
写真立ての中の少女の目は、白猫の目と同様いつも不安気に僕を見る。
ここはかつて一般の動物病院だったが、僕が地方の大学の獣医学部に行っている間に、猫専門病院に改装されていた。当時の獣医師はもういない。今は、現院長と僕の二人で診察しているが、院長は別に経営している動物病院に詰めていて、ここにいるのは僕一人だ。
入院したミイのために、僕は病院に泊まった。こういうときのためのベッドは備え付けてある。
夕食を簡単に済ませた僕は、一度ベッドに横になった。そして夜十時頃、ミイの様子を見に行くと、眠っているのか静かに丸くなっていた。
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