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薄暗さと寒さにまぎれて、ママが見えなくなったころ、先生が言いました。
「さあ、中に入りましょう、こうたくん。お友だちがたくさん、待っているわ」
にこにこと、先生がほほえんで、こうたくんを抱き上げました。
先生はちからもちで、長い桃色のスカートをひらひらさせながら、うんしょっとこうたくんを胸に抱いて、「おやすみえん」に入りました。
教室には、まっしろなお布団と、やわらくて、まあるくて小さな水色のまくらと、クリーム色の毛布がたくさんしいてありました。
子どもたちは、ふわふわしたお布団のうえで、ごろごろ寝たり、絵本を読んだり、あおむけになって、ミニカーやお人形をいじくったりしていました。
こうたくんは、楽しそうにしているお友だちをぐるっと眺めて、目を丸くしました。
「さあ、こうたくんのお布団は、こっちよ」
先生がふわり、とやわらかいお布団に、こうたくんをおろしてくれました。
おひさまのあったかいにおいをすうっと、胸いっぱいに吸い込むと、こうたくんの涙がすぐにかわきました。
ごろんごろん、ぐるんぐるん。
ねころがると、まぶたがとろりと重くなって、ふわあとアクビが出てきます。
「おやすみなさい、こうたくん。おなかがすいたら、先生をよんでね」
あたたかい手で、先生がこうたくんの頭をなでると、たちまちスヤスヤと寝息をたてて、こうたくんはぐっすり眠ってしまいました。
夢のなかで、こうたくんはママといっしょにピクニックをしたり、自転車のれんしゅうをしたりして、楽しく遊びました。
「みんな、よく眠っていい子ね」
先生は、うれしそうにほほえむと、ぱちんぱちんと、手をたたきました。
すると、「おやすみえん」はだれにも見えなくなってしまいました。
それからしばらくして、「おやすみえん」に子どもを連れて行ったママたちが、おおさわぎしました。
でも、だれにきいても「おやすみえん」のことは、みんな知りませんでした。
いったい、子どもたちはどこへいったのでしょう。
ママたちは、今日もさがしまわります。
きょうから先生が、あなたたちのママよ。
すやすや、すうすう。子どもたちはぐっすり眠っています。
先生の背中に、黒くて大きな、こうもりみたいな羽根がにゅうっと、出てきたことも知らないで。
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