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診察を終えて出て行くと、隆二がいつものようにつまらなさそうに、壁にもたれかかり、待っていた。
「お待たせ」
「あー、うん」
「神野さんは?」
「もう行ったよ」
「あら、早い」
「んー」
別れ際、一悶着あったのか、隆二の答えは歯切れが悪い。機嫌もあまり良くない。きっと、隆二も何か言われたのだろう。
神野さんの事、怖いとも迷惑だとも思っていないけれども、来なければ良かったのに、とは思っている。彼は、私と隆二に、二人の違いを見せつけて去って行った。隆二が居なくなる日は、彼のせいで確実に近くなった。
でも、今は、
「帰りましょ」
隆二の腕をとり、歩き出す。
意識して出したはしゃいだ声に、隆二は察してくれたらしい。
「ああ」
一度軽く、私の手の甲を撫でた。
砂の崩れる音がする。
じわじわと確実に。
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