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彼の心配げな声と共に、大きな手で肩を強く揺す振られる。誰だか分かる。この声は、この手は、確かに真琴だ。
『・・・時雨』
その言葉と共に、真琴の腕の中に閉じ込められる。ー柑橘系の香水の香りが鼻腔を擽り、心から幸せが零れ落ちて行く感覚がする気がする。
『妊娠、6週目だって』
「それって・・・」
俺が思わず吐息を飲み込むと、彼がふわりと笑って、俺のおでこにそっとキスを落とす。
『これからはもっと頑張らないとな!!』
その言葉は、今の俺の心を満たすには十分過ぎる言葉だった。
*
そんな幸せから少し経った翌日の事。
「はい、伊東です」
俺が着信音が鳴り止まないスマートフォンを手に取り、電話へと出ると。
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