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「城、何かあったらすぐに連絡するんだぞ」
お節介屋で誰よりも俺が大好きな太一がそう言っている。
「何があるんだよ?」
「胸がキュンとしたり、心臓がドキドキしたり」
くだらない。
俺は究極に冷めた目つきで二人を見た。
面白がっている二人を無視して俺は大通りに向けて歩き出す。
駅前でタクシーを拾うのは止めた。
あいつらと早く別れて一息つきたい。
でもどこを歩いても、満月の大きな月は俺についてきた。
やっぱり、駅でタクシーを拾えばよかった…
土曜日の夜にもなると、流しで走っているタクシーは中々いない。
俺はとりあえず家に向かって歩く事にした。
そんなに遠いわけでもないし、最悪歩いてでも帰れる場所だ。
そう思ったら、大通りを歩くのを止めた。
車の音がうるさいし、週末の夜だから人の数も多かった。
一本奥の道に入り込み静かな住宅街を歩く方が、何も考えずに歩く事ができる。
どれくらい歩いたのだろう…
全く世間にアンテナを張っていない俺でも、その異変には気が付いた。
住宅街の中でもコンビニや居酒屋が軒を連ねる賑やかな場所に隣接する小さな公園のベンチが、いきなり俺の目に飛び込んできた。
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