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すると、突然に、その子は俺の方を見た。
完全に目が合った。
俺は、一瞬、力が抜けて、かろうじて支えていた体がバランスを崩し地面に尻もちをつく。
なんだかレーザービームにでもやられたような、そんな敗北感を味わっている。
胸に目に見えない矢が刺さっている気がして、息をするのも難しい。
俺がそんな風にドギマギしているのを横目で見ながら、その子は立ち上がった。
スラッとしたスタイルに、栗色の長い髪。
多分、腰まであるその美しい髪は、やはり月の明かりを浴びて金色に輝いている。
残念ながら俺は、立ち上がる事もできずにその子のオーラに圧倒されていた。
こんなに綺麗な子は見た事ない…
誰かがこのシチュエーションを遠くから見ているとすれば、ここにいるのは女王様と下僕にしか見えないだろう。
が、しかし、その子は立ち上がったまま、またあのカップ酒を手に取った。
そして、バックを掴むと千鳥足で歩き出す。
俺はとりあえず、彼女が散らかした缶ビールの空き缶をゴミ箱に入れて、その千鳥足の彼女の後を追った。
何をやってんだ、俺は…
もう世の中は皆眠りについている頃なのに…
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