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俺と彼女の行く道を、でっかい満月の月明かりが照らしている。
あの新宿の裏通りのおばさんが俺に言った事を信じる気にはなれないが、でも、もう、今の俺には一つの感情が芽生えてきているのは分かる。
愛しみ…
どこの誰だか知らないけれど、気になってしょうがない。
放っといて帰る事だってできるのに、絶対放っておけない何か不思議な力に俺は引っ張られている。
いや、そんな事より、ただただ綺麗だった。
俺のハートを簡単に射抜く程の魅力に満ちあふれていた。
胸が痛い…
キュンキュン痛む…
それはあの子が放った矢が、まだ俺の心臓に刺さっているから…
これが恋というものなのか…?
その子の千鳥足は危なっかしくてしょうがない。
最初は5m程離れた所を歩いていた俺だが、今では伸ばせば手が届く距離まで近づいていた。
手に持っているカップ酒はフラフラ歩く度に少しずつこぼれ、今では半分以下まで減っている。
あ~、あのカップ酒を奪い取りたい…
しばらく歩くと、急にその子は道路の縁石に腰かけた。
吐きそうになっているのか、頭を自分の膝に押し付ける。
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