初出勤の朝 翼side

2/12

564人が本棚に入れています
本棚に追加
/171ページ
9月1日の朝、私はかなり早い時間に目が覚めた。 時計を見ると、まだ早朝の5時だ。 私が大阪からここ東京の地に引っ越して来たのは、ほんの三日前。 元カレの和成と、この東京の地で一緒に生活する予定だった。 高校の時の後輩の和成は私より2つ年下で、大学を卒業したら必ず結婚しようって和成の方が言ってたのに… 一浪して大学に入った和成は専門学校を出て先に働き出した私に、俺も早く働きたいといつも言っていた。 どうして?と聞くと、早く社会人になって翼を自分だけの物にしたいからって。 大学を卒業して一流商社に就職できた和成は、本社勤務を希望した。 私もただそれだけの理由のために、東京の親会社に転勤希望を出した。 私は4月の異動者リストには入れず、和成は一足先に東京へ旅立った。 遠距離恋愛の難しさを感じながら、でも、それなりに私はどうにか変わらない関係を続けていると思っていた。 でも、和成は浮気をしていた。 いや、今となれば、完全なる本気の恋… 和成の一途な愛に胡坐をかいていた私は、奈落の底に突き落とされた。 目の前にあると思っていた結婚も、一緒に谷底に消えて行った。 25歳になって年下男に捨てられた私は、いまだに立ち直れずにいる。 人生の歯車が狂い出すともう何もかもが最悪の状況になり、私の中で全く意味をなさない東京勤務が、9月の異動で正式に決まってしまった。
/171ページ

最初のコメントを投稿しよう!

564人が本棚に入れています
本棚に追加