目覚めの先 城side

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翼は髪をバッサリ切っていた。 でも、綺麗な髪質には変わりはない。 あの時、月の明かりに照らされて光り輝いていたあの髪に間違いはなかった。 俺は、あの和成という男のせいだと思った。 フラれたら女は髪を切ると聞いた事がある。 翼もきっとあいつを忘れるためにあの美しい髪を切ったんだ… 俺は、桜井さんや翼が何やら話しているのもほとんど聞かず、イライラし始める気持ちを抑え込むのに必死だった。 桜井さんが室長室から出て行き、俺は、まともに翼の顔を見る。 あの晩、翼の酔っ払った顔しか見ていなかった俺は、普通の翼を見るだけなのにただただ感激した。 短くなった髪も、見れば見る程似合っていると思えてきて可愛らしいの一言だ。 気を抜けばデレデレになってしまう俺に、以前の俺がちょくちょく顔を出して喝を入れる。 でも、目の前にいる翼の魅力にひれ伏し、ゴロゴロ寝転んで腹を見せて降参のポーズをとってしまうのも時間の問題だろう。 俺は翼をどうしたい? こんな湧き上がる感情を黙らすにはどうしたらいい? そんなの答えは簡単だろ… 翼は俺のものになる。 それは、俺の気の済むまで永遠に… 俺が冷静に舵を取れればの話だけど…
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