“愛しみ”は底なし沼

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翼が首を長くして待っていると、桜井さんは疲れた顔をして室長室から出てきた。 「桜井さん、ど、どうでした?」 桜井さんは力なく首を横に振る。 「小牧さん、小牧さんにとっては緊急非情事態発生かも…」 翼は心臓が喉をせり上がってくるほどの恐怖を感じた。 「今すぐに、小牧さんのデスクを室長室に移動する事になった。 小牧さんの仕事は、室長がその都度指示を出すんだって… 小牧さん、覚悟を決めてね。 私の力では何もできなかった、ごめんなさい…」 翼は無理に笑顔を作る。 そうだよ、桜井さんは頑張ってくれた… 「分かりました… もう、こうなったら開き直ります。 室長のペースにのまれないように、私も私らしく頑張ります。 私、こう見えて、結構激しい性格なので、もしかしたら室長の方から私を追い出すかもしれません」 桜井さんは頼もしそうな顔でうんうん頷いている。 すると、急に、室長室の大きなガラス窓のブラインドが上がった。 翼がそちらを見ると、室長と思いっきり目が合う。 イケメンなのに能面のような顔の室長が、翼に向かって指で手招きをしている。 分かりました… 行けばいいんでしょ… こうなったら早く追い出してもらうように自分を出させてもらいますから。 室長、覚悟を決めて待ってて下さいね。
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