“愛しみ”は底なし沼

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マジか… 城は停まりかけたタクシーを断って、翼の後を追った。 最後の方はかなり飲んでいたから、翼の足元は若干ふらついて見える。 城は翼の腕を後ろから掴んだ。 「家まで送るよ」 立ち止まった翼は下を向いたまま動かない。 城が翼の前に回り込んでみると、翼は肩を震わせて泣いていた。 「何で泣くの?」 翼はこんなに美人なのに、自分に自信がなさ過ぎる。 泣いたり落ち込んだり、そんな事には無縁のはずなのに… 「……二次会に、誘って…もらえなかった…」 城はそれが落ち込む理由かと驚いた。 「二次会に行きたかったのか?」 翼は下を向いたまま、うんと頷く。 城は声を殺して泣いている翼の肩を優しく抱き寄せた。 「よし、じゃ、今から二次会に行こう。 どこでもいいぞ。 どこにでも連れて行ってやる。 じゃ、最上級の夜景が見える店で、最高級のワインを飲みに行こう」 城は華奢になった翼の腰を、自分の方に力強く引き寄せた。 そして、翼の笑顔をあまり見ていない事に、ぼんやりと気付く。 城は空を見上げた。 今夜は月が見えない夜だ… 翼と出会ったけれど、翼は俺を愛してくれるのかな…?
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