“愛しみ”は底なし沼

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城は、以前、太一達と行った事がある夜景が綺麗なワインバーに翼を連れて来た。 たまたま窓に面したカウンター席が二つ空いていて、城と翼はそこへ通された。 「すごく綺麗…」 さっきまで隠れていた月が今は顔を出している。 夜景とかそういう類のものに全く興味がない城は、別に同調する事もなく席に座った。 ここの夜景の売りは、至近距離に東京タワーが見えるということだ。 城はとりあえず太一達に感謝した。 あいつらがいなかったら、俺は東京の飲み屋なんて一軒も知らなかったはずだから。 翼は外の夜景から目が離せないらしく、まだ立ったままだ。 城は隣に座るように促した。 「室長がこんな素敵な店を知ってるなんて、すごく意外です」 翼は夜景からやっと目を離し、城を見てそう言った。 「…まあね」 太一に陽介、お前達は最高の友達だよ… 「何、飲む? もう、お酒とかは止めた方がいいと思うよ」 俺はさりげなくノンアルコールを進める。 「甘いカクテルが飲みたいです。 こんな素敵なバーだから、きっとお店のおススメのいい感じのカクテルがあると思います」 城は苦笑いをして目を細める。 ま、乾杯はお酒でもしょうがないか… 「いいけどさ… さっきの店でもかなり飲んでたろ? じゃ、一杯だけだぞ」 翼の腑に落ちない様な目は無視して、店員を呼んだ。 「ビールとおススメのカクテルで」
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