“愛しみ”は底なし沼

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城は翼のちょっと怒ったような顔をずっと見ている。 何時間見てても飽きないって、きっとこういう事を言うんだろうな。 「私… 聞くのがちょっと怖いけど、でも、今日は室長に絶対に聞かなきゃと思って… 私と、室長って、一体どこで会ったんでしょうか…?」 城は何も言わずに外を見ている。 「東京ですか? それとも大阪? それとも…」 城は切羽詰まった顔の翼を見て、笑ってしまった。 「なんでそんなにたくさんの地域が出てくるんだ?」 「そ、それは… 私の考えでは、私に記憶がないという事は、多分、酔っ払ってたのかな?みたいな…」 城は告白し始めた翼が面白すぎて、何も言わずに鑑賞した。 「で?」 「私、恥ずかしながら、色々な場所で記憶を失くしてまして、なので、室長から言ってもらわないと、私は全く見当がつかないんです…」 城はあっけに取られた。 あんな醜態を俺の前以外にも、他にもいろいろしでかしてるのか? 「確かに、俺が君を見つけた時は、ぐでんぐでんに酔っ払ってた」 「……あ、やっぱり」 翼の顔に落胆が見える。 分かってはいたものの、改めて聞かされたらかなりショックらしい。 「その時、君は新宿のスマイリーホテルって所に泊まっていた」 「やっぱり、あの時の東京での出来事なんですね… あの東京に居た二日間は、精神的にも肉体的にもいっぱいいっぱいで、悔しくて悲しくて憎たらしくてかなりの量のお酒を飲んだのは事実です」
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