“愛しみ”は底なし沼

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「何が原因か分からないけどさ、その和成ってやつは罰当たりもんだな。 こんないい女を捨てるんだから」 翼は殺気じみた目で城を睨んだ。 「捨てたとか言わないで下さい」 感情が薄い城もさすがに反省した。 でも、逆に、まだその和成っていうクソ野郎を引きずっている翼にも腹が立ってきた。 「そのクソ野郎をどうすれば忘れられるんだ?」 「知りません!」 翼はおかわりしたカクテルをまた一気に飲み干した。 もう、かなりフラフラになっている。 前の店で飲んだビールの酒量と合わせると、このカクテルは完全に悪酔いさせるパターンだ。 そして、翼は酔っ払っているのかずっと泣いている。 「もう、帰ろう。 家まで送って行くから」 城は翼を抱えて店を出る。 こんな時のために、翼の履歴書から住所を控えていてよかった。 城はタクシーに乗ると翼の家の住所を言った。 翼の家は都心から結構離れていた。 カードで支払いを済ませた城は、翼を起こしてバックから鍵を取り出す。 翼をベッドに寝かせたら、俺は帰るんだぞ… 城は翼の部屋のドアを開けた途端、唖然とした。 段ボールで埋め尽くされた翼の部屋は、まだベッドさえ組み立てていない。 城はドタバタ段ボールにぶつかりながら、とりあえず翼をソファに寝かせた。 生真面目で神経質な城は、立てかけているベッドの部品を取り出した。 ベッドがないと寝れないだろ? 俺は、翼のこの狭い部屋で段ボールに囲まれて、きっとこのまま朝を迎えるだろう。 残念ながら…
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