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こんな新宿の裏通りで大の男の大人が三人でたむろしていれば、客引きが次から次へと寄って来る。
俺はそんな雰囲気に我慢できずに、残りの二人にそう言った。
「俺らも帰るからさ、城、怒んなよ」
太一は何かを言いたくてうずうずした顔でそう言うと、駅の方向へ歩き出した。
「俺の事はどうでもいいんだってさ」
三人で歩いていると、訳の分からない事を太一が話し出す。
「あの占い師のおばさんだよ。
俺の話はあっという間に終わって、後はずっと城の話をしてた」
「城の??」
陽介は一人店の外にいたため、話が見えない。
太一はもうすでに顔が緩んでいた。
「一番近い満月の夜に、眠っている本来の城が目を覚ますんだと」
陽介は目を丸くして二人を交互に見ている。
「ああ、それね。
俺も同じ事を言われたけど、全く意味が分からないよ」
太一は酔いもすっかり覚めているのか、にやけ切った顔で二人の前に立つ。
「俺が丁寧に説明してやるよ。
近い満月の夜に、城は運命の相手に出会うらしい。
その時初めて、城の眠っている全ての感情が目を覚ます。
あのおばさんの話では、城は別人に生まれ変わるらしいぞ」
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