3 春過ぎて

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3 春過ぎて

 今までより日が過ぎ乗るが早くなり高校卒業まですぐだった。卒業式に両親は来なく、クラスの中でただ1人だけで帰って勉強した。ミカはユリの通っていた高校に合格できた知らせはうれしい。しかし、それは手放しで喜べない。妹の卒業式には両親は来なく姉であるユリは式場外で待ってしまい心残りだった。しかし、ミカの笑顔で幾ばくか救われたような気がした。だが、ミカの高校入学には同伴できなかった。ミカもユリの気持ちを察したのか来なくていいと言った。知っている先生にあって、優しい言葉をかけられたくない。それが心の片隅にあってミカをユリと同じ目に合わせてしまった。 「私もお姉ちゃんの高校入学に行けなかったのでオアイコ」私のおさがりの制服を着たミカの言葉はこの先耳から離れることはない。  予備校に通い授業がはじまっても手足の震えは続き、いつまた大きく記憶が抜ける恐怖が付きまとった。  高校の授業を終えて帰ってきたミカと予備校での授業を終えたユリは今までと変わらなく同じ机に座り勉強し母のチェックを受けた。 季節は移ろい変わる。雨が多くなる季節となった。雨でぬれた傘を玄関につるして靴を脱いだ。今まではミカのほうが早かったが、今ではユリが早く帰る。午前中で授業を終えるように母が組んだから、しょうがないところもある。  居間の机で勉強しているといつもの時間にミカが帰ってきた。私の隣に座りカバンから問題用紙と回答用紙を出している。 勉強中はお互いに話さない暗黙の了解が出来上がって久しい。夕飯の菓子パンと総菜を食べていたら、そんな話が上がった。少し話が盛り上がった夕飯の後に始めた勉強は今までより少し軽く感じた。 「おわった?」  閉店までのシフトだった母が帰ってきて勉強のチェックを始めた。 「ユリ、いつもインフルエンザウイルスワクチンを打ってもらっている先生を知っているよね。今日仕事中にその先生と話をしていたら、ユリの手足の震えを見てもらえる先生を紹介してもらったから来週土曜日に行ってみて」  すべてのチェックを終えて付箋を貼られた問題集を返した母は言った。  ユリがうなずく間もなく母はそのクリニックへの道順を示したメモ紙と交通費等のお金を手渡した。
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