3 春過ぎて

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 ミカが高校の勉強合宿へと1週間家を空けた。ユリが高校にいる間、勉強合宿はなかったがミカの時から始めるようだ。母は少し反対したが、学校の設けた機会だからと言って許可した。妹がいない間ユリは月に1回のクリニックに通った。手足の震えがなくなったが記憶がなくなることを話すとほかの薬を出してもらえた。ただ、薬剤師がその薬の名前を見て暗い顔をした。見間違えだったのか、いつもより少し時間がたって薬が出てきた。不審に思ったが受け取って薬局を出た。台風が近づいているせいか、いつもより人通りがなく、看板などがひもでくくられている。薬剤師の暗い顔が忘れられなく、寄り道して図書館に行った。パソコンを借りて今日受け取った薬をインターネットで調べた。最初からももらっているのは自立神経を整える薬だと説明があった。それは薬局でもらっている薬の紙の説明書き通りだった。今日もらったのは老人の痴呆症用の薬と説明があった。慌てて薬局からもらってきた説明書をみた。もの忘れようとの説明しかなかった。よくわからず他のインターネットのページを見た。どれも同じように書かれており、未成年者への服用に言及しているのはなかった。頭が混乱するだけだった。今度そのクリニックの医者に聞いてみることで何とか落ち着いて風が強くなる前に家に帰った。  翌日は台風が直撃し、居間から見えているイチョウの木がなびいている。電車通勤している父は出勤する時間が過ぎても家にいた。母のパート先のスーパーは臨時休業しているみたいだで、母もいて家の中の空気が張り詰めている。正月でも家にいない父と一緒に朝ごはんのテーブルを囲うのは何時ぶりだろうか。しかも、母も一緒なのは小学校の時は記憶になかったと思う。
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