2 冬へ

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「ユリ、寝なさい!」  居間に入ってきた母は一喝した。ユリが廊下に出ると居間に入る扉はすぐに閉まった。和室の自室に戻り扉を閉め布団をかぶると怒声が聞こえた。  よく寝られなかった。デジタル時計を見ると朝5時少し前を示していた。目が冴えてしまった。廊下に出る扉を開けようとすると、廊下を歩く音が聞こえた。少し扉を開け、覗くと背広を着た父が家を出るところだ。玄関の扉が開いて閉まる音を確認してから部屋を出た。  居間に入ると母が目にクマを作っていた。 「ユリ。ミカ1週間入院するから」  昨日のスーパーで買ってきた白米を茶碗に分けている母は言った。 「今日と明日閉店までのシフトだから代わりに行ってくれる?」 「わかった」と頷いた。 「これ病院の名前とバス代。着替えはそこにあるから」  母の指すミカの机にはバッグに入っているが、まだチャックを閉めていなく寝間着が顔を覗かせている。  白米と薄い豆腐が入っている味噌汁の朝ごはんが済むと英単語のテストをした。その間母は昨日の範囲のチェックをしている。テストを済ませ母のチェックを終えると制服に着替えてチャックを閉めたバッグとカバンを持って家を出た。12月に入り一段と寒くなった。コートを羽織ってくればよかったと後悔した。バスに揺られ、学校に着いた。  朝の小テストは1問読み飛ばしてしまった。それが悔い残った。いつものように授業を受けお昼のテストの成績結果は1問間違いだった。そうあの読み飛ばした問題だ。午後の授業を終え、病院に行くため駅経由のバスに乗った。6階建ての地域総合病院前にバスがつくと駅で乗ってきた人も何人か降りた。ユリもそれに続いて支払いを済ませて降りた。冬なのだからか日の傾きは早い。正面玄関から入って受付の列に混じった。ユリの順になり、妹の見舞いの旨を伝えた。受付の人は笑顔で手続きを進めた。提示した学生証をカード入れにしまって、見舞客と書かれている服に挟めるピンバッジを受け取った。それを服に留めた。 「あちらのエレベーターで3階に上がりナースステーションにお声掛けください」  そのように言われ、エレベーターで3階に向かった。
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