2 冬へ

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 母からミカの病室を聞いていないので、エレベーターを降りナースステーションに向かった。ナースステーションで妹の見舞いと名前を伝えた。妹の着替えを手渡すと「ありがとう」と返ってきた。もう帰ってというような空気が流れている。  「あのう、妹と面談したいですけど」  妹の荷物を受け取った看護師は少し困惑した。ほかの看護師と少しばかりの相談ののち妹の病室に案内してもらった。引き戸を引いて少し広い個室に案内してもらった。個室の隅で医療機器やチューブをつけている。その光景に中に足を踏み入られなかった。 「ミカですよね」 無意識に看護師に聞いてしまった。笑顔でもない表情でうなずかれ重たい足を踏み入れた。 「ミカ」  妹の傍らに立って肩を軽くたたいて名前を呼んだ。焦点の合わない瞳が私を見た。口を覆っているマスクのせいなのか声が聞こえない。だが、頬には涙が流れている。ミカが無事だった。それが差し出された腕にチューブの針が刺されている姿でも。ミカの手を握った。あたたかい。ミカの前で初めて泣いた。  気が済むまで泣いた。ミカは寝息を立てて眠っていた。心電図は正常の値を示して動いている。見守っていた看護師に礼を言って部屋を出た。 「ユリさん少しお話してもらってもいいですか」  病室の扉が閉まったら看護師が尋ねた。ユリが頷くと小さな会議室に案内された。 「ユリさん、ココアかお茶でも飲みませんか」 「お茶をお願いします」  会議室の中は丸いテーブルに丸い椅子が置いてある。扉近くの椅子に腰を落ち着かせると看護師が聞いてきたのでお茶を頼んだ。 「わかったちょっと待っていてね」  看護師は笑顔でうなずいて部屋を出た。湯気を立てた紙コップを持って戻ってくるのに少しも待たなかった。 「ありがとうございます」  お茶を受け取りそう答えた 「ユリさんの通っている高校は進学校ですよね」 「はい。3年生です」 「うわ。受験勉強大変だね」 「私も高校生のころは夜遅くまで勉強してがんばっていたよ」 「そうなんですか」 「そうなの。ねぇゆりさん英語得意?」 「うらやましいな。文法覚えるのを苦労しているけど何かいい方法ある?」 「うーん。日本語のような順序ではないので英語の順番を覚えています」
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