0人が本棚に入れています
本棚に追加
──ぼろり。
口を開いて声を紡ぎ出そうとしたその直後、なにかが崩れる音がした。
これまでにも何度か耳にしたことのあるそれは、命の終わりの音でもある。
ハッとして手を伸ばした先、崩れた花が土塊へと変化した。ワタシの手の中で砂となったそれは、やがて塵となり、空気中へと消えて、そして見えなくなっていく。
「アッ……」
突然のことに対応できず、驚きと共に小さな声を漏らせば、残っていた根すら、その姿を変えて地面の中へと呑まれていった。
残酷とも言える一つの最期。冷たく儚いそれを視界、ワタシはふと頭を回し、思考する。
ああ、これは会話を為したかったわけではない。
花はその命の終わりを望んでいた。
だからワタシと───ワタシの声を、聞こうとしていたんだ……。
理解した時には、無償に胸中が苦しくなった。締め付けられるように痛むそれを、解放する術をワタシは知らない。なぜこんな想いをしているのかすら、わからない。
なぜ、どうして。
どうして、そうまでして──。
「──ミンナ、消えてイクんだロウ……」
声を出し、背中を丸め、さめざめと、さめざめと泣く。
ここには誰もいやしない。
ここにはそう、ワタシ一人……。
最初のコメントを投稿しよう!