ワタシというもの

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──ぼろり。 口を開いて声を紡ぎ出そうとしたその直後、なにかが崩れる音がした。 これまでにも何度か耳にしたことのあるそれは、命の終わりの音でもある。 ハッとして手を伸ばした先、崩れた花が土塊へと変化した。ワタシの手の中で砂となったそれは、やがて塵となり、空気中へと消えて、そして見えなくなっていく。 「アッ……」 突然のことに対応できず、驚きと共に小さな声を漏らせば、残っていた根すら、その姿を変えて地面の中へと呑まれていった。 残酷とも言える一つの最期。冷たく儚いそれを視界、ワタシはふと頭を回し、思考する。 ああ、これは会話を為したかったわけではない。 花はその命の終わりを望んでいた。 だからワタシと───ワタシの声を、聞こうとしていたんだ……。 理解した時には、無償に胸中が苦しくなった。締め付けられるように痛むそれを、解放する術をワタシは知らない。なぜこんな想いをしているのかすら、わからない。 なぜ、どうして。 どうして、そうまでして──。 「──ミンナ、消えてイクんだロウ……」 声を出し、背中を丸め、さめざめと、さめざめと泣く。 ここには誰もいやしない。 ここにはそう、ワタシ一人……。
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