君へ

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 その日、オルゴールは静かに止まった。終わりを、僕に告げることもなく。  もう一度ねじを回すことのできない、だけど見た目は変わらないオルゴールだ。  いつも通りのオルゴールの音を僕は心待ちにしているんだと思う。だってずっと君の横にいるんだから。  こんな時どうやって笑えばいいんだろう。君のあのクシャっとした、どこか憂いを含んだ笑顔を思い出してみる。  だめだ、笑えない。きっとぼくはかなわないんだ。   蝉は外での一週間を思いっきり謳歌する。だから魅力的だ。  君もきっとこれまでの時間を精一杯謳歌してたんだろう、自分の残されている時間と闘いながら飛び切りの笑顔を僕に見せてくれてたんだ。  その笑顔に僕もきっと惹かれたんだ。あの短くも長い8月を謳歌する君に。      
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