あの日(8月1日)

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「君は笑わないよね。なんかつまんないよ。」  公園のベンチに座り、君はいきなりそう言った。 「そうかな。」  苦笑いでそう答えるしかなかった。僕は笑う余裕なんて持ち合わせていなかった。  もうすぐいなくなってしまうはずの君に、さらに僕は惹かれていたんだ。  どこか、儚げで寂しそうな君の表情に。  花は散り際が美しいなんて聞くが、それは本当かもしれない。  そんな不謹慎なことを考えている僕の顔に迫って、君は笑う。 「ほらこうやって、口角を挙げて_......」  君が笑い方の説明をする。ぼくはそれを必死でまねる。  でも笑うほど苦しいんだ。  もうすぐいなくなってしまう君の前で、笑えるわけないじゃないか。  だから、僕に君のきれいな笑顔を向けないでくれ。  感情が抑えきれないから。  うつむく僕を見て、君は困ったように笑う。 「泣いてくれてありがとう。」  君は一言、僕の肩に頭をのせてそう囁いた。  生まれてから18年、知り合いの前、ましてや恋人の前で泣いたことなんかなかったのに。  もう日も落ちてきている。  僕たちはいろんなことを話した。  他愛もない話、将来の話。 正直、話した後は何を話したかさえ覚えていなかった。  でも、君のその一言だけが感情を抑えていた僕の心に刺さったんだ。  お互いにじゃあまた、といって家に帰った。  帰り道で君のことを考える。そのたびに頬に海水が伝う。  君の言葉だけが僕の心に夕立を降らせる。      
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