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散乱する紺や生成りに埋もれてようやく息が整った横顔を、日向はそっとみつめていた。変態だのなんだのと言ってはいるが、逸也はやっぱりずば抜けて男前だと思う。
まるで黄金比の見本みたいな鼻梁から唇へのラインを視線でなぞっていたら、男前の瞳がパチリと開いた。「なんだよー。足りなかった?」なんて言われながら引き寄せられて、甘い余韻のまま本音が出た。
「イチさんて、ほんと腹立たしいほどイケメンですよね。今さらながら優勝できなかったのが悔しい気持ちです」
「あー、まぁ俺もな、顔の造作云々はどーでもいいんだけどさ。優勝したかったなーってのは本音」
「やせ我慢王め。素直に、わーん悔しいよーって言えばいいのに」
「わーん、優勝して日向と矢追谷温泉に行きたかったよー」
ふざけて泣き真似をしているけれど、本当は優勝したかった気持ちは伝わってきた。副賞狙いだったのか。
「温泉、入りたかったんですか?」
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