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 都心からJR、私鉄と三回乗り換えて一時間半。駅前から真っ直ぐのびる『あけぼの人情商店街』  全盛期には数十件あった商店の半数は、駅向こうにできた大型スーパーの集客余波を受けてシャッターを下ろしたままの状態だ。昭和レトロと呼ぶには中途半端な古さの商店街は、大半が後継ぎのいない高齢経営者ゆえ店じまいの時間も早い。  夜の八時ともなれば早々に眠りにつくアーケードの下で、『トキタ惣菜店』は通勤帰りの勤め人のために今日も店先に明かりを灯していた。 「あーあ、今夜はサエねぇなぁ。ま、この雨じゃ仕方ねぇか」  明日の目玉商品にするおでんの火加減を気にしながら、時田逸也(ときたいちや)は大きくのびをした。  十月の半ばだというのに暖房を入れたくなるような寒い日が続いている。例年なら十一月に入ってから提供するおでんを、今年は早めに仕込んでみた。出汁の香りが漂う店内には、売れ残りの惣菜が寂しげに並んでいる。  だし巻き玉子、蓮根と枝豆のきんぴら、おからとひじきのサラダ。トキタ惣菜店で一番人気、夕刻に合わせて揚げたてを出すメンチカツもいくつか残ってしまったのは、スーパーの特売日が影響しているのかもしれない。
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