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社会人
とはいえ、湿っぽい布団に身をまかせ眼を閉じていれば、むなしい感情。輝いていた学生時代の記憶ばかりがよみがえる……
「はあ……」
ため息が出て俺は目を開ける。何もない天井に、もの悲しさを覚える……
「こんなだったかなあ……」
高校……大学……それなりに勉強をして青春を謳歌し、それなりの企業に就職をした。
それこそ入社当時は右も左もわからず、ただガムシャラに仕事をこなしていたのが昨日のことのように感じる……
あれから何年たったのだろう?今の俺はといえば、自分でも感じているほど見事な歯車なのだと思う。自分のノルマと業務をこなし、休みといえば只管に寝て体力の回復を図るか、酒の力を借りて溜まり切ったうっぷんを晴らすかだけ……
あの頃の無尽蔵と思えたほどの体力やバイタリティも今はない……
「こんなだったかなあ……」
同じセリフが口をつく。
子供あったころに思い描いていた大人は、もっと輝いていた気がする。
だが、今はどうだ?俺は輝いているか?
「んなわけねえか……」
一人ごちる……
それでも……あの頃、馬鹿をやった友人も、あこがれた先輩も同じ世界にいるのだ。
同じ世界、社会で頑張っているに違いないのだ……
「やるしかねえんだけどなあ……」
逃げだしたい思いと、負けたくない思い
相反する思いに俺は薄く笑い目を閉じる。
そう明日は必ずやってくるのだ。
「疲れてるんだなあ……」
そう呟いて、もう一度、俺は目をつぶる……
今はただ眠ろう。夢であっても、そこに繋がっているはずの友人の顔があるのだから。
そして、また明日を頑張るために。
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