拝啓 初恋のあなたへ。

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拝啓 初恋のあなたへ。

拝啓 初恋のあなたへ  僕にはじめの恋を教えてくれたのは、あなたでした。  肉親とも、近所の人とも違う。同い年のあなたでした。  はじめての出会いを覚えているでしょうか。私は覚えています。とても、今でも鮮明です。今も忘れていません。  あなたの母親に連れられて私も母親と一緒に来たとき、親しげな会話をする母親同士を余所に私は母親の影に隠れようとしているあなたばかりを見ていました。  私を見ようとしてくれて、けれども怖がって顔を少しだけ覗かせていましたね。その仕草がとても愛らしくて、あなたの洋服も母親の服の裾を掴む手も、目も髪も、すべてが私には可愛く見えていました。  名前を聞く事も、挨拶すらも忘れて、ただあなたを見つめるばかりの私を恐いと思っても仕方のないことだと、今の私は懐かしく、どこかむずがゆい恥ずかしさを覚えております。  あなたが私に言った最初の言葉を覚えていますでしょうか。  誰、でもありません。恐い、でもありませんよ。  かっこよくない、でしたよ。  なんだか今思い出しても胸がきゅっと痛みます。初対面にそれはないでしょ。あとから聞けば、どうも格好いい男の子と事前に話を聞いていたからだと。     
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