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日本の少子化は最早引き戻せない水準に達していた。
半世紀前には考えられなかったことだが、
政府はこの世界に日本人の血よりも文化を遺す方向に舵を切った。
移民を積極的に受け入れ、言葉を教えた。
そうした甲斐もあり人口は一億人規模を維持しているが、
街を歩けば出会う二人に一人は「外国人」だ。
尤も、彼らの国籍までは一目では分からないから、
もしかしたら彼らも日本人なのかも知れない。
一時期に較べて帰化のハードルは驚く程下げられたし、
二十一世紀初頭においては残念ながら当たり前のように行われていた
入管行政官による難民申請者や不法滞在者に対する差別的な処遇や虐待も、
すっかり改められた。
そのような多文化社会の形成を目指した日本政府が次に手を付けたのが
「孤独」の問題だ。
自殺率だけは、残念ながら半世紀前から一定の水準を維持している。
どういう訳か「日本人」は死んでしまうのだ、自らの手で。
自殺は、もしかしたら「日本の文化」なのかも知れない。
日本の社会がどのような制度を作ろうと、
成員が如何に変化しようと、
日本が日本である限り一定の人々は必ず自殺してしまうのかも知れない。
僕にはそうとしか思えなかったけれど、
政治家は流石にそんなに悲観的ではないらしかった。
この袋小路を打ち破る為に、ありとあらゆる手段を講じることにしたらしい
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