蒼い服を着た神さま

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  時々優しい瞳で俺を見つめながら、柊は教えてくれた。 カナダに来たばかりの頃、最初はケベック州に住み着こうと思ってたけど、少しでも日本に近い場所が良くてバンクーバーにしたこと。 才賀さんを引き抜いた時の泣き落としの話。 何度も挫折して、碓氷村に帰りたいって思ってた時期のこと。いい事ばっかりじゃなかったよって。 「ここに来たら、ホームシックになってても不思議と落ち着いたの。もうちょっと頑張ってみようって思えた」 シャトー・フロンテナックの脇にひっそりと佇むホーリー・トリニティ教会。観光客もまばらな堂内。祭壇の後ろには壮麗で美しいステンドグラスが……… 「綺麗……」 「近くのノートルダム大聖堂が有名だし豪華だけど、俺はこっちが好き」 「この神様、ラピスカラーの服着てる」 「このステンドグラス見た時に、初めて、この国で飛ぶ自分のヴィジョンが鮮明になったの。何でだかわかんねーけど」 自然に、神様に向かって伸ばしかけた手を、柊が冷たい指で掬うようにそっと掴んだ。そしてそのまま唇に押し当てられドキドキしてると、薬指にするりと指環を嵌められた。 え、え、え。 「良かった。ぴったり」 え、え、え、え、え。 え────────!!
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