翼ある者

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  しかし可愛い。可愛すぎる。まるで初めてキス(とか色々)して互いの想いを確かめ合ったあの日……ビニールハウスから引き揚げた後のタイチみたい。急に赤くなったりチラチラ視線を投げてきたり、それはもうぎこちなくて。 「柊……どうしよう……お皿割った……」 おい貴様それ、どう見ても高級陶磁器……!凝った細工、マイセンか……!てか西川くん、何でこんなフツーにキッチンに置いてる……!これだから天然物のお坊っちゃんは……! 「とりあえずキミは座っていようか」 「でも晩ごはん」 「パスタ茹でてソースあっためて和えるくらいなら俺にも出来るさ。熱湯でも被ったら取り返しがつかないから。さあさあ」 うわぁ。シンクぐちゃぐちゃ。いつも手際よく、複数の料理をしながら洗い物もゴミ処理もこなし、野菜くずひとつ落とさないタイチがパンクしてる。マルチタスクの申し子のようなタイチが。 しかしマイセンが見事に割れとる。これ一枚で1ヶ月の食費を軽く越えそうだ。ちなみに昨日から何気なく、急須のように使ってるポットはどう見てもエルメスだからな。壁にズラリと並ぶイヤープレートもロイヤルコペンハーゲンだからな。暖炉の上の天使達もまず間違いなくリヤドロだからな。あぁ割れ物ばかり……! 何というデンジャラスゾーンか。気が休まらん。
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