愛さえあれば

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  着地した瞬間の感触。決めた。成功した。怖くなかった。飛べた……! 柊…… 柊……………! 「柊っ!飛べた!成功(メイク)した!」 柊のもとへ。 笑顔で待っていてくれる柊に向かって、真っ直ぐ滑り降りる。 「俺………俺、本番で飛べた……!」 抱き止めてくれた柊ごと勢い余って転倒したけど、心配をよそに柊は笑ってる。その満面の笑顔がやがて泣き笑いに変わって、ついにはオイオイ声を上げて泣き始めてしまった。こんな子どもみたいに大泣きする大人を初めて見た。綺麗な顔がやっぱりグシャグシャになっちゃって。 「せっかくマッサージしたのに……」 「うるさいっ……またすればいいだろ……!うっうっうっ……」 昨日に引き続き、皆さんいらっしゃる前でどうしたものかと考えあぐねていたら、ミーチャが腕の中に飛び込んできた。小さい体で目一杯、ぎゅうっと抱きしめてくれる。 「ミーチャも見ててくれたの?」 「ミーチャじゃない、ドミートリー」 「うん、ドミートリー」 「やっぱりミーチャでいい……」 柊はスタッフさん達にズルズルと雪の上を引っ張って行かれ椅子に座らされて。困ったように笑う西川さんが、俺に拳を向けた。
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