愛さえあれば

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  信頼。柊が信頼してる人からそんな言葉が貰えるなんて嬉しい。俺って素直と言うより単純なんだと思う。 森さんはウナギみたいに掴み所がないようで、押さえるべきはキッチリ押さえ、見るべきをきちんと見てくれる。この距離感、凄く有り難いし安心する。仕事の出来る大人ってきっとこんな人のことを言うんだ。 「若いから色々大変でしょうけど、シーズン中は自制するように心掛けましょうね」 「はい、心掛けます」 「ホント素直です」 自制………自制か……… あんなカッコよくて綺麗で可愛くて、その上やらしい人が目の前にいるのに、自ら制御できるのかな。いや、しなければ。柊がエロいのは二人きりの時だけだし、きっとなんとかなる。昔はちゃんと乗り切れてたし。俺にも柊みたいにスイッチが付いてたら良かったのに。 それにしたってあの見事にオンオフ使い分ける柊が、昨日今日は引くぐらい泣いてばかりだった。いくら身内ばかりだったとは言えびっくりした。 『タイチが飛んだ』 『ちゃんと飛んでた。嬉しい』 俺、どれだけ心配掛けてたのかな。どれだけ……俺が飛ぶのを待っていてくれたのかな。泣いたり笑ったり怒ったり、くるくる変わる表情が浮かぶ。 ありがとう、柊。 あなたにはどんなに感謝してもしきれない。
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