愛さえあれば

4/37
前へ
/367ページ
次へ
  見上げたキッカーの上にはいつの間にか柊がいる。深い青色(ラピスカラー)のウェアが、雪景色に浮かび上がるように映えてカッコいい……素敵…… いや、見惚れてる場合じゃなくてホントに飛ぶ気?今日は(俺のせいで)歩くのも大変だって文句言ってたのに。 「葵、ドローン出してる?」 「もう出てます。あそこに」 「絶対外さないで。太一くん、モニター見えてる?」 「大丈夫、です」 アップ、引き、上から下から横から、どのモニターも一斉に柊を映し出した。冷静に見回すとカメラ、カメラ、カメラ。これ……今日の撮影用、俺のジャンプを撮る為に用意されてたってこと?マジ?腹は括った筈なのに、やっぱりちょっと怖い。 「カメラの数、バレちゃったね」 「はい、あの、俺」 「びびった?」 「………はい」 西川さんは微笑む。灰色の瞳が、労わるように優しく見つめてくれる。 「だから柊ちゃんは飛ぶんだね。太一くんだけの為に。フェイ!ミーチャ!こっちおいで~!シュウがカッコよく飛ぶから一緒に見よ~!」 だから柊は飛ぶ。 俺のために。
/367ページ

最初のコメントを投稿しよう!

311人が本棚に入れています
本棚に追加