愛さえあれば

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  「1620!4回転半!」 「着地も決まった!完璧!凄いエアー!」 俺が村で飛んだ4回転半。何度も繰り返して見たトリプルコーク1620。自分でも再現できるかわからない、正直まぐれとしか思えないジャンプを。脳内の『stay gold』に乗り、柊が……完璧にメイクした。 「太一くんのジャンプそっくり。ホントに二人って一心同体なんだね。スゴイ」 「一心同体」 「一心同体☆」 柊のスラッシュで白く煙るパウダースノー。片足のビンディングを外した柊が、フラットを俺に向かって滑ってくる。 ダメだ泣きそうだ。 柊は……俺のために飛んでくれたんだ。怖くて足が竦んでばかりの俺のために。ゴーグルを上げた柊の、まだ少し腫れた目元。薄茶色の瞳が真っ直ぐに俺を見つめるから。 眩しくて立っていられなくなる。震える。抱きしめても、強く抱きしめても止まらない。 「おまえまさか、このタイミングで泣いてないだろーなっ」 泣かない。泣きそうでも泣かない。柊と違って俺は人前で泣いたりしない。ただ、心と体が震えて止まらないだけだ。 「俺、涙出ない体質だし」 「はぁ!?聞いた事ねーぞそんなのっ!てか先に言えっ!」 「なんの話だよ」 「~~~~っ」
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