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大丈夫だ。俺は飛べる。柊がここに、胸にいてくれたら俺はちゃんと飛べる。怖くなんかない。もう何も怖いものなんてない。約束どおりあなたは俺を飛ばせてくれる。
ちゃんと見ていて。目を逸らさずに全部見ていて。
「太一くん、行ける?」
「はい」
「外すことはないケド、一応上から合図出してね」
「はい」
深呼吸する。新しい空気で肺を満たして。
長かった二年半。誰かを失望させること、期待を裏切ることが怖くて、視線が怖くて。脚が、体が竦み続けた本番の舞台。
ゆっくり呼吸を整えて。集中して。柊のジャンプ、今のエアーを思い描いて。イメージはいつもより鮮明にある。俺のジャンプをトレースする柊を、俺がもう一度トレースすればいい。修正はいらない。ただ柊の呼吸を想像して、重ねて、あとは飛べばいい。
左胸には竜神様がいる。柊がいる。俺に全てを与えてくれる、柊がここにいる。
見ていて。俺は飛ぶから。飛んで、真っ直ぐあなたのもとに帰るから。
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