思い出と傷

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あれは確か小学生の時の話だ。 宿題を学校に忘れたことに気付いた私が学校に戻って自分のクラスの教室に入ろうとドアに手をかけたときに聞こえてきた話声。 帰りの会が終わってからもうかなり時間が経っているにも関わらず声がしたので、誰が残っているのか気になってドアにかけていた手を下ろして聴き耳をたてた私に聞こえてきた…否、聞いてしまった話。 引っ込み思案でうまく人と話せなかった私は人と話すことが苦手で、あまり、というか殆ど友達がいなかった。休み時間は本を読んだり絵を描いたりしていたし、放課後はすぐに家に帰って家でもまた本を読んでいた。 そんな私にある日声をかけてくれたのは結花という友達だ。結花は私と違って明るくて友達が多くて、休み時間や放課後も友達と遊んでいることが多い子だった。 接点も全くなかった私はどこか結花の存在を遠くに感じていたのだが、「たまには一緒に遊ぼうよ」と声をかけてくれたその日を堺にぐっと距離が近くなった。 それ以来私は結花にすっかり懐き、休み時間になれば結花のところにいって話かけたり後ろを追いかけていた。その度に結花は笑って「小動物みたいでかわいい」なんて言ってくれていたのだが。
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