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1. プロビデンスの目
こつこつと足音を響かせて歩く女の背中を追う。背丈より大きな棚が左右にそびえており、道幅は狭く、すれ違うのを危惧するほど。時折、女の担いだ円筒の黒いドラムバッグが触れて、布の擦れる音を立てている。間取りや天井を見る限りではそれなりに広い部屋のようだが、この配置のせいで、窮屈でうす暗く感じる。棚にはプチプチとも呼ばれる気泡緩衝材や、潤滑油のスプレー缶が置かれており、消耗品の倉庫として使用されているようだった。コンクリートの床は緑色である。法令で決められているわけでもないのに、工場の床はこの色であることが多い。お客さんの話では、目に優しいとか部品が落ちたときに見やすいようにとか、そんな理由があるそうだが、私は水色や橙色のような明るい色の方が、気分が高揚していいと思う。
女は斜めにかけたドラムバッグを担ぎなおして、棚の途切れた隙間を曲がった。暗い茶色がかった髪は短く、首が隠れるほどの長さである。黒のパンツスーツ姿からは、足が長くスマートで、賢そうな印象を受ける。一方で、工場の入口で話した際の様子は幼く、艶のある肌の状態からも、私より若いかもしれないと思っていた。
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