1. プロビデンスの目

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 私も体の向きを変えて彼女の後に続いた。棚の側面が向かい合った道はわずかな距離で、突き当たりの扉は既に開かれていた。ビーッ、ビーッ。近づくにつれて、一定の間隔で鳴り続ける機械的なアラーム音が大きくなる。扉に遮られた工場の中央へと足を踏み入れる。  視界がぱっと明るくなった。高い天井には、水銀灯が等間隔でぶら下がっている。三面の壁はいずれも遠く、とても広い空間だった。一際目を引くのは、建物の真ん中に立つ、天井まで届く大きな自動倉庫だ。薄い柱か壁のような形をしており、側面は黒い網状になっていて中が透けて見える。どの棚板にも荷物の載ったパレットと呼ばれる台が置かれており、かなりの数の資材が格納されている。搬入搬出口の脇に掲げられたランプは赤色に点滅していて、残念ながら自動倉庫が動いている姿は見られそうにない。  女は後ろを気にする様子も無く、すたすたと先へ進んでいた。工場の設備を見学する余裕は無いようだ、私は慌てて後を追った。明るい視界の下、改めて容姿を確認するが、ずいぶん背が低いように見えたのは、ローヒールのパンプスのせいもあったようだ。     
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