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「この動作に見覚えはあるか?」
画面には、ロボットのシミュレーションソフトが開いてある。二台のロボットのCGが、アームを伸ばした状態で表示されており、交差するように互いの方向に旋回するアニメーションを繰り返している。
「ロボットの最後の姿勢が、加藤さんが殺害されたときの姿勢と一致した」
タッチパッドを叩き、シミュレーションを一時停止させると、二台のロボットは三角形を描いた。
「このデータが保存されていたのは、一年前。丁度システムができあがった頃のことだ。幸い三島重工には工場の入出記録が残っていた。照らし合わせると、このプログラムを動かしていたのは岡部、お前だってことが分かったんだ」
私は立ち上がり、岡部と視線の高さを合わせた。
「殺したのは人工知能じゃない。一年前から綿密に計画を立て、プログラムという毒をパソコンの中に潜ませ続けていた、異常な執念を持った殺人鬼。――お前だよ」
食堂は静寂に包まれた。岡部は椅子に腰掛けると、頭の後ろで手を組み、背もたれにもたれかかった。
「あいつ、そんなデータを残していたのか」
自身が殺人事件の犯人だと認めた瞬間だった。
「どうして三年も後になって、殺したんだ」
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