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岡部はやる気の無い顔で、こちらを振り向いた。
「加藤さんは仕事中にロボットのことを教えろと言ってきて邪魔だった。伊藤さんはアリバイ工作に使ったことで調子に乗って、結婚しろと煩かった。そうこうするうちに、殺意が積み重なって殺したんだ」
「お前は、そんな理由で――」
石島が怒鳴ろうと大きく息を吸い込むが、生駒の冷静な声に遮られた。
「くだらない嘘はいいから、本当のことを教えてあげなよ」
岡部は満足そうに頷くと、平然と言い放った。
「刑事さんが、口止め料を要求されていたからだと言っていたけど、多分違う。大した額でもなかったしな。聞いている最中に、三年も経っていたのかと思ったくらいだし、時期はいつでもよかった。正直、別に殺さなくてもよかった。ただ先に計画が浮かんでいて、条件に一致したのが、たまたま今年だったんだ」
岡部が両腕を揃えて前に突き出す。石島が思い出したように手錠を構え、差し出された腕に掛けた。
「岡部宗一、十八時二十三分、殺人容疑で逮捕する」
岡部が立ち上がり、私の前に歩み寄る。
「データが残っていたのもそうだけどさ。中川、お前がいたのは計算外だったな」
逮捕されたというのに、岡部は不気味なくらいに落ち着き払っていた。
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