5人が本棚に入れています
本棚に追加
事件は解決し、犯人は捕まった。いかにも刑事みたいな風格を持ちながら、以外にお茶目な石島。犯罪心理と法医学に精通しているが、空気を読めない行動がたまにきずな生駒。豊富な工場の知識を持つが、精神的に脆かった私。でこぼこだが、上手くお互いが噛み合っていたチームは、ここで解散する。
券売機横の柱が見えた。生駒と待ち合わせた場所。たった一週間の思い出だというのに、懐かしく思える。
改札の前で、石島が足を止めた。別れの時が来たのだと切ない思いを抱きながら、私達は向かい合う。
「それでは、私はここで。この度は捜査にご協力頂き、ありがとうございました」
「えへへ、どういたしまして」
「お前には言っていない」
生駒に厳しいツッコミを入れながらも、石島は笑顔だった。彼らのようなあけすけな付き合いがうらやましく感じた。出会い別れが多い、警官ならではの光景なのかもしれない。
「中川さん、お元気で」
「石島さんも。無理しないでください」
敬礼する石島に礼をして、改札を通る。壁に隠れて見えなくなるまで、彼はその場で敬礼を続けていた。
私が前、生駒が後ろに立ち、上りのエスカレータに乗り込む。生駒は科警研に戻るため新幹線で東京を経由して千葉に、私は会社に戻るため京都に向かう。
私達はエスカレータから降りたところの、電車のホームで足を止めた。
「さっき社長から直々に電話があって、会社に戻れることになったよ」
「無事調査が終わってよかったね」
生駒はかすんだ音の、やる気の無い拍手をしてみせた。
最初のコメントを投稿しよう!