15. エピローグ

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 彼女と出会ったのは、ほんの一週間前のことだった。それも殺人現場に連れて行かれるという、忘れようがない最悪な出会いだった。自身のことを犯罪心理と法医学のプロだなんて言って、変な女だと思った。  電車が走り去り、乗客が消えて静かになったホームに、ふと音楽が流れ始めた。デフォルメされたメロディが、古くはないが懐かしい光景を思い起こす。  一緒に行動をしてみて、実のところ彼女は、ムードメーカーで、頭が切れて、面倒見がよく、頼りになるということが分かった。自身のことをサイコパスと呼ぶように、突拍子も無い行動で周りを困らせることもあるが、悪意によるものではなく純粋な気持ちによるものだと気づき、それは魅力へと変わった。記憶を失ったところを助けてもらい、共に事件のことを調べ、お互いを支え合っていたことで、いつしか彼女は自分の中で、離れがたく、かけがえのない存在になっていた。  このまま別れたくない。私は振り向いた。  火曜サスペンスのメロディを流していたのは、やはり生駒のスマホだったようだ。彼女は足を止めて電話を始めた。  電話が終わったようで、生駒はスピーカーを耳から離してこちらを振り向いた。 「ナカさん、遺伝工学は詳しい?」  こっそり近づいたつもりだったのだが、私が戻って来ることを知っていたかのような態度だった。もっとも犯罪心理のプロなら、これくらいのことはお見通しなのかもしれない。     
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