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床には通路を示す黄色のラインが描かれており、その左右には安全柵で囲まれた加工システムが並んでいる。安全柵は目立つ黄色のフェンスで、面は目の粗い金網になっている。隙間から、工作機械やロボットが並んでいるのを目にすることができる。稼働していないようだが、パレットの上に円筒の穴が空いた大型の金属部品が並んでいるのが見えた。
工場特有の切削液の酸っぱい臭いに混じった、金属の錆びたような臭いが鼻につく。進むにつれて、気のせいで片づけられない程に、異常以外の言葉が浮かばない程に、濃くなっていく。そういったこととは、まるで無関係な生活を送っていた私でも分かる、それは近い。自分の心臓の音が大きくなったのを感じた。
パンプスのヒール音が止んでいた。女は足を止め、斜め前の足元を見つめていた。彼女の視線の先を追う。そこには、薄いピンク色の塊が転がっていた。なるほど、緑色の床は落ちたものがよく映える。それは光を受けて白く光っており、妙にみずみずしく見えた。
立入禁止と書かれた黄色のテープが、安全柵の切れ目の入口にバツ印で貼られている。再び歩き出した女の後を追って、私はテープの下をくぐった。
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