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それだけの、真ん中に隙間のできた無機物の造形だったなら、きっと不安定な絵面だったと思う。二つのアームが一直線上に位置するこの姿勢は特異点と呼ばれ、ロボットにおいて忌避される動きである。操縦者だったら操作盤を置いて目を覆い、恥じたくなる。しかし、加えて縦に入った歪んだ形の有機物の影が、見るものに均整を感じさせていた。
二台のロボットの間からは、肢体が力なくぶら下がっていた。垂れ下がった手足の位置から判断すると、ロボットの手が重なった位置に、頭が存在するはずだった。目を凝らすと、アームの間からところどころ頭髪と思しき毛の束が見えた。
上着は元々の色が分からないくらい赤黒く濡れている。濃く染まった肩の周りは、水銀灯に照らされてじゅくじゅくと光っている。垂れ落ちた血がところどころに縦縞を作っている。
ぶら下がった手足は、生気を感じさせない力の抜け方をしており、指先から血を滴らせていた。また、少し体が浮いているようで、足先だけが血溜りに浸かっていた。
元々白色だったロボットは、飛沫を受けて赤く染まっていた。粘性のある液体はケーブル間に糸を張り、ロボットから地面を這って放射状に線を引いていた。コンベアやパレットチェンジャ、少し離れたところにあるマシニングセンタまで、あらゆるものに、毛のついた肉片や、ピンク色の塊がこびりついていた。
そうだ、ここに辿り着く前に見た、床に転がっていた物体は、脳みその破片ではなかったか。
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